第5回ふくまる夢たまごセミナー

更新日:2021年02月01日

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  •  日時 8月26日(金曜日)18時~20時
  •  場所 池田市役所7階大会議室
  •  内容 講話「安全・安心な学校づくり」
    •  ~あれから15年 後世に伝えていかなければならないこと~ 
    •  講師:矢野克己先生(池田市立緑丘小学校校長)

今回のセミナーのテーマは「安全教育」です。

 今年も矢野克己校長先生(緑丘小学校)にお越しいただき、15年前の体験談をもとに、安全で安心して過ごせる学校づくりについてお話をしていただきました。

 大阪教育大学附属池田小学校で起こった児童殺傷事件も、あれから15年目を迎えました。当時、副校長としてお勤めになられていた矢野先生でしたが、当時の様子やその体験を長い間、話すことができませんでした。事件から10年を機に、2度とこのような理不尽な事件を学校内で起こしてはならない、体験した者の責任として、これから教師をめざす若者に伝えなければならないという思いから、辛い記憶を乗り越え、語り伝えることを決心されました。ふくまる教志塾では、2期生のみなさんからこの「ふくまる夢たまごセミナー」でお話をしていただいており、今回で5回目となります。

白板に貼った資料を使い、マイクで説明している矢野克己校長先生の写真

 今年も、犠牲になった子どもたちやそのご遺族、今なお後遺症に苦しむ被害者やそのご家族のことを気遣い、時折、声をつまらせながらお話をしていただきました。

今回は、27名の塾生と、講師として学校に勤めている特別聴講生1名が参加してくれましたが、学校現場で働く多くの若い教職員にも聞いてほしい内容でした。

以下、矢野校長先生が講話に使用されたレジュメの一部を掲載いたします。

 属池田小事件を教訓として
 後世に伝えていかなければならないこと

事件当時の教職員は、目の前に起こっていることに、その場の判断でそれぞれが必死に対応し、子どもたちの命を救おうと懸命に救命活動を行ったが…。混乱の中で学校全体としての状況把握ができず、組織だった救命活動を行うことができなかった。

<安全管理に万全はない>

  1. 重大な事件、事故がおきれば「学校危機」
    普段からの安全管理が大切(「まさか」からの脱却)
    • まさか侵入者はいないだろう。
    • まさかプール事故は起きないだろう。
    • まさか遊具は壊れないだろう
    • まさか…
  2. 「学校は安全な場所である」という過信から、危機意識をもてなかった。
    「開かれた学校」とは「多くの人が集う学校」と考え、その中に犯罪者がいることは想定ができなかった。
  3. 京都日野小事件(1999年12月21日生起した運動場での児童殺傷事件)があったにもかかわらず、安全管理に生かせなかった
    この事件について、当時の副校長から職朝で通知を聞いたが、自分たちの学校でも起こりうることだと創造できなかった。
  4. 管理職に危機管理意識が不足し(ケガ防止対応に関心を向けていた)、教職員にもいざという時の心の準備が備わっていなかった。
  5. 児童通用門、正門小扉、自動車通用門が常時開放されたままになっていた。
    安全よりも利便性を大切にしていた。
  6. 校舎前の樹木が、来校者を見えにくくしていた。(安全設備・環境への意識が低かった)
    来校者を職員室等から見渡せる工夫を設備点検でも入れる必要がある。
  7. 来校者確認は、事務所前で行っていたが、悪意を持つ侵入者に対しては無防備であった。
  8. 教職員の来校者に対する安全管理意識が低かった。
    • 来校者への「声かけ」の大切さを意識していない教職員がいた。
    • 「声かけ」の大切さを、教職員同士に共通確認できていなかった。
  9. 事件後、学校電話(3台)がパンク状態。児童緊急連絡網(家庭電話)が機能せず。
    非常時の連絡体制が未整備であった。 
  10. 緊急時の児童の帰宅方法を検討していなかった。   

<危機対応能力が不十分であった・不審者対応緊急マニュアルがなかった。>

  1. 不審者対応や多数の負傷者を想定した緊急マニュアルがなかった。→訓練もせず。
  2. 目の前の対応に必死で、組織だった救命等を行うことができなかった。
    負傷児童の氏名、場所、人数、負傷の程度等の確認ができず、混乱の中で各教員まかせの救命活動になってしまった。【管理職のリーダーシップが発揮できなかった】
  3. 火災報知機を火事以外で使用するという意識がなかった。
    火災報知機は全校に学校危機を知らせる有効な方法であることに後で気づいた。
  4. 救急搬送に教職員が同乗することができず、どこの病院に搬送されたのか掌握できなかった。 → 傷ついた児童に保護者が早期の面会ができなかった。
    救急搬送担当者(複数)を決めておくことが必要。
  5. 情報交換が十分でなかったため、全体的組織的な救急活動ができなかった。
    指令本部が必要。私自身が大学への連絡、保護者対応、警察対応、マスコミ対応等で動き回っていた。また、事件後、直ぐに事情聴取のため警察に連れて行かれてしまい、事件後の緊急対応を行うことができなかった。事情聴取は後日にしていただくようにお願いをすればよかった。 (警察に反論する余裕すらなかった。)
  6. 事件後、即座に「緊急対策室」を立ち上げ、1.)記録担当 2.)マスコミ担当 3.)遺族対応 4.)負傷者対応 5.)保護者対応 6.)児童対応等の担当を決め、組織だった対応を行うべきであった。特に、記録担当は事件後の検証を行う上で、たいへん重要である。
  7. 結果として、「110」より、人命救助の「119」
    • 犯罪が起こってけが人等がでたとき、「110」は事情を聞かれるので時間がかかる。
    • 消防は、生命がかかっているためできるだけ早く駆けつけてくれる。

あらゆる手段をつかって複数の通報(警察・消防)を行うことが大切である

今こそ、こんなときだからこそ、学校安全について みんなで考えよう

<教職員は、子ども一人ひとりの大切な「いのち」を守る仲間>

 最後に、事件後14年が経過し、本事件はだんだんと風化してきている。保護者や地域の皆さん教職員の危機意識はしだいに薄れ、「いじめ」「不登校」「自殺」「ハラスメント」「虐待」等の問題にその関心は移ってきている。当然、これらの問題は学校危機管理の上からも非常に重要な問題であるが、「子どもが安心して学ぶ学校」を創っていく上で、本事件の教訓も決して忘れてはならない。日本社会が疲弊し、人と人との関係性が希薄になる中で、第二の「事件」が起こらないとも限らない。

<危機管理意識の低い学校の象徴>

  • 上靴にサンダルが多い。(いざという時に走れない)
  • 名札を着けていない教職員が多い。
  • 毎年、侵入者対応プログラムにもとづいて、訓練や確認を行っていない学校
  • 附属池田小事件を他人事だと思っている教職員が多い学校
  • 保護者や地域の皆さんから危機意識が弱まってきている学校  
  • 学校事故やプール事故を想定し、マニュアル化や訓練を行っていない学校    
  • 学校事故の未然対策を怠っている学校 等々
横2列に並んだ椅子に座っている参加者が資料を見ている写真

  被害にあった子どもたちと同世代の塾生のみなさんは、いつも以上に、切実感を持って聞き入っていました。

 その後、矢野校長先生のお話を受け、「学校の安全」についてグループワークを行い、班で話し合ったことを聞き合い、交流を深めました。

グループごとに分かれて資料を見ながら意見交換している方々の写真
1名の女性が資料を見ながらマイクを使い話をしており、資料に書き込んだり、女性の方を見たりしている方々の写真

 最後に、セミナーアドバイザーから、語り継ぐことは『万が一』を準備することであり、学校の重要な役割でもあること、危険を取り除くことだけが安全教育ではなく、危険にどう対処するかの能力を身につける教育でもある、等々の話があり、第5回ふくまる夢たまごセミナーが終了しました。

塾生の感想から

  • お話を聞いている時、私が同じ立場になったら何ができるだろうと考えました。犯人に立ち向かった先生は、とても勇気のある行動だと思います。しかし、その行動で、先生が重傷を負ってしまったら、その後、誰が子どもを守るのかという意見もあります。まずは、事件が起こっていることを学校全体に知らせることが大切であると学びました。
    矢野先生がおっしゃっておられたように、非常ベルを押すだけでも、何かが起こっ  ていることは分かります。たった5分の犯行で、8名の死者、15名の負傷者が出ました。一瞬の判断が子どもを守ることにつながると、改めて感じました。
  • 知っているようで知らなかった附属小の事件の詳細を聞くことができ、保護者側から知っていた内容が、教員の側からの意識に変わった。子どもを守ること、通報することの優先順位については、たいへん考えさせられた。一人で子どもを守ることへの危険性、通報のため、現場を離れることへの危険性、これらを考えると、いかに安全管理マニュアルが大切かがよく分かる。
    現場実習では、危険を感じることに出会ったことはないが、もし実習中に何かあった時、きちんとした対応ができないであろう自分に不安を覚えるとともに、次、学校へ行かせていただいた時には、真っ先に電話の場所、非常ベルの場所等を確認したいと思った。実習とはいえ、安全面への配慮は熟知しておく必要があると思う。
  • 矢野先生のお話は、昨年も聞かせていただきましたが、昨年聞かせていただいた時とは、教師の責任の重さ等の感じ方が異なっていました。自分自身が成長してから聞くこと、また忘れないように聞くことは、非常に大切で、それを何度も語り継いでいくことは、学校、教師の責任であり、私自身もその責任を感じるとともに、語り継いでいきたいという思いでいっぱいになります。
     教員採用試験を受け、本格的に教師への道を歩んでいるという実感の中、安全面、子どもたちへの教育、そして、語り継いでいくという重要な責任を胸に、これからも学んでいこうと思います。
  • 想像しただけで辛くなるお話でしたので、話してくださった矢野先生は、どんな思いで話されていたのかと思うと胸が痛くなりました。心から感謝したいです。
     私が天王寺にある附属小学校で実習に行かせて頂いた時、誤作動のベルに子どもたちがとっさに反応して、担任の先生方がいらっしゃらなかったのに、ほうきやブラシを手にして身構えていた様子を見て、とても感心したことがありました。鎌田先生のおっしゃるとおり、安全教育は危険を取り除くものではないと感じますが、それでも万が一を、ここまで想定しておくことが非常に大切だと思います。池田市は、きっと不審者対応への意識は高いのでしょうが、私が現場に入ることができれば、率先して危機意識を高められるようにしていきたいです。
  • 矢野先生のお話を聞かせていただいたのは2回目だったのですが、何度聞いても、改めて安全教育の重要さを実感しました。自分がもし、当時、附属小で教員だったら、どう対応するだろうかと、いろいろ考えてはみるものの、どれが一番最良なのかが定かではありません。その中で求められるのが、教員同士のチーム力や一人ひとりの臨機応変に対応する力だと思います。その力は、いざという時にはすぐに発揮できないと思うので、日頃から、教員同士がしっかりコミュニケーションをとり、万が一を想定した実践的な研修をし、全教員で共有していくことがチーム力として強みになると思いました。
1名の男性が席の横に立ち、マイクを持ちながら話をしており、席に座っている参加者が男性の方を見ている写真
席の横に1名の女性がマイクを持って立っており、グループごとに分かれた参加者が女性の方を向いている写真

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