第7回ふくまる夢たまごセミナー

更新日:2021年02月01日

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 学校の安全管理  ~「まさか」からの脱却~

 11月16日(金曜日)午後6時より、第7回夢たまごセミナーを府市合同庁舎5階大会議室で開催しました。参加者は、塾生・聴講生の27名です。今回は、安全教育がテーマで、講師を池田市立五月丘小学校矢野克巳校長先生にお願いしました。セミナーには、村田教育長の参加と主催者としてのあいさつがありました。

セミナーの様子画像
セミナーの様子画像

【 講義 「学校の安全管理」 】


1.自己紹介

今日の話を聴くには覚悟が必要である。覚悟して聴いてほしい。新任として石橋小学校で10年勤め、その後11年間、附属池田小学校に勤務した。石小の10年は、子どもと遊んで子どもの心を掴もうとした。附属小の最後の3年間、副校長を務め、「附属池田小事件」に遭遇した。


2.附属池田小事件とは 

「附属池田小事件」では、死亡者8名、負傷者15名の大惨事となってしまった。犯人は37歳、身長180cm・体重80kg、子どもを守るか、犯人と対峙するか、瞬時に対応を求められた。目の前にあるものでしか対応できないという体験をした。だからこそ、日頃の準備と心構えが必要である。
 当日は、児童通用口・正門の子扉・自動車専用の扉の3か所を開けていた。犯人は、自動車専用の出入り口から侵入した。花壇の近くで出会った教員は、侵入者に会釈はしたが、相手からは返しが無く、声はかけなかった。その後、犯人は次々に教室で児童を殺傷した。教室に設置していた電話で校内放送は可能だったが、うまく機能しなかった。数分後、一人の先生が犯人を確保し、そこへ私が駆けつけて犯人から凶器を取り上げ、その後、到着した警察官に犯人を引き渡した。犯行時間は5分ほどで、多大の犠牲者を出してしまった。
 当時688名の児童が在籍し、事件後の最初の保護者説明会で「最善を尽くした」と説明したが、そうではなかった。一生懸命に対応したが、組織だった対応ができていなかった。個々バラバラに対応してしまった。遺族にも、どのように亡くなったかさえも伝えられなかった。副校長として指示が出せず、右往左往してしまった。ほとんどの先生は、何が起こったかも把握できていなかった。情報伝達と指示系統の確立が大切だと痛感した。
 事件後、メンタルサポートチームの協力を得た。附属小の場合、教育委員会のような相談相手がなく、後日、大学と相談できる体制が整った。学校再開に向けて、ご遺族への対応や2人の担任の交代を行なった。学校再開に向けて、6月19日には、学校に置いたままになっていた児童の学用品を返却した。8月4日には保護者説明会を開き、職員から聞き取った「事件の経過報告」を保護者に示した。報告作りは,時系列がなかなか掴めず、2ヶ月かかった。あれだけの事件が起こり、保護者の信頼回復がむずかしかった。従来は、家庭訪問のない学校だったが、2名体制で家庭訪問を行なった。また、フリースペースという活動を行なった。学校再開は、ロの字型の2階建てのプレハブ校舎で行なった。後に、今の本校舎に引っ越した。その都度、市民ボランティアの協力を得た。


3.後世に伝えなければならないこと

懸命に救命活動をしたつもりだったが、混乱の中で状況把握ができず、組織だった活動ができていなかった。「まさか」からの脱却が必要である。まさか侵入者はいないだろう、まさかプール事故は起きないだろう、まさか遊具は壊れないだろう・・・。つまり、日常の安全管理・点検が大事である。学校は安全な場所という過信があった。京都の日野小での殺傷事件があったのに、教訓にできていなかった。開かれた学校づくりを標榜し、利便性を大事にしてしまっていた。自然豊かな緑の多い学校と考えていたが、逆に見通しが悪く、事務室から来校者を見通せなかった。安全管理に万全は無い。
 次に、学校の危機対応能力について、目の前の対応に必死で、組織だった救命等を行なうことができなかった。救急搬送に教職員が同乗することができず、どこの病院に搬送されたのかを把握できなかった。情報交換が十分でなかったため、全体的組織的な救命活動ができなかった。事件後、即座に「緊急対策室」を立ち上げ、記録担当・マスコミ担当・遺族対応・負傷者対応・保護者対応・児童対応を決め、組織だった対応を行なうべきだった。結果として、緊急時は、「110」より「119」である。警察は事情を聞かれるので時間がかかる。消防は、生命がかかっているため、できるだけ早くかけつけてくれる。また、あらゆる手段を使って複数の通報をすることが大事である。
 事件後の対応から、誰も逃げ出さなかった教職員に感謝している。事件後の苦悩は、筆舌に尽くしがたい。最後に、第二の犯人を出さない、「子どもが安心して学ぶ学校」を創っていきたい。

 この後、恒例のグループ協議に移りました。途中、村田教育長から次のようなコメントがありました。
 「この日をずっーと待っていた。どうしても聞きたかった。そんなすごい話を塾生の皆さんは聞けた。教師としてすべきことは、犯人がなんであんな人間になったのか、なぜそんな気持ちにさせたのか、人をあやめるような子どもを作らない、心を育てる教育の必要を痛感する。みなさんには、子どもと一緒に悩んだり、苦しんだりして、子どもを育む先生になって欲しい。」

【 塾生・聴講生の講演の感想 】


感想

1.あいさつの大切さを感じた。生徒同士も先生も、知らん人が入って来たときに、言葉かけをすれば事件が防げたと思う。安全に関して、組織だって動く研修が必要だと思った。生徒にも、そのような対処する方法を学ばせておく必要があると思う。
2.安全・安心が当たり前、危機意識がない、そうでないという意識を持つ必要がある。自分が果たして何が出来るか。先生は、子どもを守るために必死に戦っていかなければならないと思った。と同時に、人を殺すような子どもを作らないことが必要だと思う。
3.マニュアルがあると思うが、常にまさかの時の心構えが必要である。外来者に対するあいさつ、声かけも大切である。
4.安全教育について、学校がどんな取り組みをしているか話し合った。
5.(当時、在籍)自分自身、この話から逃げていた。当時の先生方が頑張ってくださったのを感じた。
6.普段穏やかな学校のとっさの対応、大切なのは子どもの命を守るという気概、覚悟であると思う。

セミナー参加者の画像
感想聞き取り中の画像

 あの時から11年間沈黙していた矢野校長先生の思いとその重さ、事の重大さ、そのことを胸に刻んで、これからの教育に取り組みたいと痛切に感じた2時間余でした。改めて、被害に遭われた8人の天使の冥福をお祈りしたいと思います。勇気を振り絞って話をしていただいた矢野校長先生に心より感謝申し上げます。本当に、ありがとうございました。
 次回、第8回の「ふくまる夢たまごセミナー」は、12月21日(金曜日)午後6時より、市庁舎7階大会議室で開催します。テーマは、「授業づくり3.~指導案の作り方~」です。
 教志塾では、引き続き聴講生を受け付けています。希望者は、名前、大学名、連絡先等、事前に教育政策課まで、お知らせください。また、現場の先生の参加も歓迎します。

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