ふくまる教志塾開塾式

更新日:2021年02月01日

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若い先生に期待すること

 「ふくまる教志塾」は、3年目を迎えました。今年度は39名の塾生・聴講生の応募があり、2日間の面接を経て、22名を塾生として、17名を聴講生として採用しました。そして、5月31日(金曜日)に市庁7階大会議室で開塾式を開催し、教育実習等で欠席の学生を除く塾生・聴講生と現場の教員、連携しているティーチ・フォー・ジャパン(NPO)のメンバーが参加しました。ここで、開塾式の概要をお知らせします。

5月31日 平成25年度ふくまる教志塾開塾式

(画像)開塾式1
(画像)開塾式2

 開塾式は午後6時よりスタートしました。教育政策課鈴木主幹の進行で、最初に出張中の塾長のふくまるくんに代わって、奥さんのふくまるちゃんに登場してもらいました。開式のあいさつは、公務出張中の村田教育長に代わって田渕教育部長が行いました。
 昨年度より豊能地区3市2町が府教育委員会より教職員の人事権の移譲を受け、池田市が池田市の教職員の任命権者になりました。現在、採用は府と合同で行っていますが、早ければ1、2年後には3市2町で教職員を募集し、採用することになります(事務職員は今年度から独自に採用、研修も今年から3市2町でおこなっています)。ふくまる教志塾は、セミナーと現場実習の2本柱になっています。現場実習では、さまざまな学校業務を体験してほしいと思います。また、聴講生のみなさんは、できればボランティアで学校に行ってほしいと考えています。本日は、連携協定を結んでいる大阪教育大学監事の野口克海先生の話しを聴いてください。では、みなさん、1年間頑張ってください。
 この後、野口先生より「若い先生に期待すること」と題して講演をしていただきました。

野口克海先生「若い先生に期待すること」

 みなさんは、私とは関係ないと思うかもしれない。でも、教育界は狭い。みなさんの在籍する大学の先生方とも知り合いである。私は、大阪府教育委員会で20年間、教員採用試験をやって来た。
 はじめに、「教育は熱と涙」ということを話す。この題名の本を先月発行した。みなさんの学生時代にも、情熱のある先生はいたと思う。子どもは、先生をじーっと見ている。自分の子と思ったら、少々できなくてもかわいい。1年間で学校の先生は何回泣くと思う? 卒業式、体育祭、文化祭、子どもが事件を起こした時、その都度、教師の仕事にはまっていく。学校の先生はいい「商売」である。涙が出なくなったら、教師をやめてください。子どもと熱く燃える、その熱が教育の土台である。熱と涙がなくなったら、教育は成り立たない。
 2つめは「規範意識を育てるために」である。どうすれば子どもたちに規範意識を育てることができるか。私立の中・高の校長のとき、学校はケータイを持ってくるのを禁止していた。ところが、最寄り駅で電車に乗ったら、みんなケータイを使っている。先生たちに見つからなければいい、規範意識を持たなくていい、という指導をしているのか、もし、ケータイぐらい必要な時代になっているんだったら、きっちり許可してやってください、と先生たちに言った。これは、生徒会に相談したらいい。自分たちがきまりを作り、守るような子どもを作れば、規範意識が育つ。管理を強化することではない。大事なのは、子どもたちが納得して約束を守るようにすること。

(写真)セミナー風景1
(写真)セミナー風景2

 3つめは、「子どもの人権と『いじめ』、『体罰』」である。大津の事件では、「教育委員会は何をしているんだ」という声があった。教育委員会は学校からの報告を基に、生徒が亡くなったのはいじめもあるが、ほかにも問題があったと発表した。そうすると、いじめを隠して他の責任にするのか、教育委員会がダメということになった。本当の原因は、学校の先生たちが子どもが見えていなかったこと。その子が苦しんでいるのを誰も気付かなかったのか。府教委時代に、ある母親から手紙をもらった。内容は、小6の息子が、図工の時間の時、隣の席の子が机をガタガタさせて描けないので「やめとけと言うとるやろ」と言ってその子の肩を押したら、差別的な発言をされた。担任の先生に電話で「先生気付いておられましたか、先生の方でその子と親御さんにご指導いただけますか」と言うと、担任の先生は、「来週予定の個人懇談の時に話します」ということで、びっくりした。今、うちの子が苦しんでいることを理解してもらっているのだろうか。さらに、夜、校長先生から電話をいただいた。「その子や親御さんにしっかり指導します。ただ、子どものことで悪気はなかったと思います。」手紙は、「大阪の人権教育はこんなレベルですか」という抗議であった。心から血を流している子がいるのに救急車を呼ばないのか。2002年に同和関係の法律が無くなったら差別は無くなったという錯覚がある。「心から血が流れている」と感じられる感性を教師は求められている。
 「体罰は愛のムチ」というのはウソ、教師のおごりである。中学校の生徒指導主事の時、ある子が万引きした。父親の帰宅を待って担任と家庭訪問した。父親は子どもから事情を聞いて、両手をついて「すんません。どんなに出来がわるくても私の息子です。死んだ家内に申し訳ない。どんなことでもします。」と言われた。翌日、4人で店に謝りに行くとき、「昨日は、あの後どうでしたか」と父親に尋ねると、「本人は、ずっと仏壇の前で長い間、正座していました。」という答え。この子は2度と万引きしないと思った。このように、体罰をしなくても、心にしみ込む指導は出来る。体罰は、一番安易な、指導の弱い教師の使うもの、教師のおごりである。教師の人権感覚を育て、心で感じ取り、愛のシャワーを浴びせればいい。教育は「愛と熱」。今でも、中学の教師になったことを後悔していない。先生は、卒業生にとっていつまでも先生である。
 4つめは、「体験的生徒指導論」である。「同行二人(どうぎょうににん)」という言葉がある。2校目の中学の時、荒れた生徒2人と私と新任の先生と4人で75日間の山ごもりの合宿をした。山小屋に分校を造り、本校と連携して指導しようと無期限で合宿を始めた。食事と入浴以外は、一対一で行った。1カ月半ほど経ったある日の夜、学校で一番荒れてたその生徒が話し始めた。「セン、おれな4歳のとき死にかけて、親父が一生懸命、病院探してくれて、入院した。その間にオカンが家を出て、退院後、妹と2人で施設に預けられた。親父が月に2回会いに来てくれた。親父の腕にしがみついて、連れて帰ってくれと言って泣いた。施設では、先輩におやつはとられるし、たいへんだった。」「セン、施設のことしらんかった。一緒にがんばろな。」その日は、その子と手をつないで寝た。思春期の子どもとの付き合い方、頭ごなしが一番ダメ。「同行二人」でやるのが一番ということを「非行生」から学んだ。
 最後に、「子どもは好きな人からしか学ばない」ということを話す。府内のある市の教育委員長をしている時、新任2年目の先生が30人ばかり集まって、自主研究会をしているところに声を掛けられて行った時のことである。1人、下を向いてため息ばかりついている小3の担任の先生がいたので尋ねた。「実は、今日、遊び半分に給食のパンを残していいかと言いに来た子がいたので、残さず食べなさいと言うとパンを床に投げ捨てたので、それを拾って食べさせた。」「先生はその子が好きか、好きでないことが子どもに伝わっている。今から家庭訪問をして、先にこちらから頭を下げたら説明になる。親御さんが言いにきはってからでは、言い訳になる。好かれると思うな、好きになれ。そうすれば、子どもは勝手に付いて来る。

  野口先生の「熱と涙」の講演の後、1人の塾生が感想を述べた後、1人の聴講生から「レジメにある『よい教師の三つの条件と三つの輪』について知りたい。」という声が上がり、時間の制約もあり、野口先生から「よい教師の三つの条件」について話していただきました。

 初めて担任したとき、球技大会の前、班ノートに「明日は球技大会、休みたいなー」と書いている生徒がいた。自分が好きだから、どの子も球技大会に燃えると思い込んでいた。その子の家に飛んで行った。「休んだらアカン、強い子だけで勝ってもうれしない、お前が休んだら俺も休む。」からだの弱い子、勉強のわからん子、家庭的に恵まれない子に思いを持てる教師が良い教師。

 野口先生には、もっとゆったりとお話いただく計画をすべきだったと感じました。最後に、阪本教育部次長の閉式のあいさつで、開塾式を閉じました。

(写真)セミナー風景3

 ここに、塾生・聴講生の感想を紹介します。

野口先生の講演の感想

  • 野口先生の経験に基づいたお話を聴く中で、教師という仕事についていろいろと考えさせられました。例えば、いじめ問題の話では、教師一人一人の人権感覚(子どもが心から血を流しているのを感じとれる感覚)の重要性を実感しました。また、体罰について、「愛のムチは教師のおごり」だというのは、とても共感できるものでした。そして、体罰よりもっと心に響く指導ができる教師であったり、親になりたいと思います。
  • 今日、野口先生のお話を聴いて「教育は熱と涙」という言葉が心に響きました。胸が熱くなるような体験談が多くあり、涙が出そうになりました。昨年の開塾式でも野口先生のお話を聴きましたが、その時からさらに先生になりたい、先生になる! という思いが増したように思います。これから教員を目指す上で、子ども立ちの目線に立ち、心を理解し、一緒にがんばろうという気持ちを忘れずにこの一年間頑張ります。
  • 本当に貴重なお話を聞かせていただいたと思います。一つ一つが胸にささりました。お話にもあった通り、子どもは本当に敏感だと思います。よく見ています。本気で子ども一人ひとりの姿を見つめたいです。教師が一生懸命動いていると、子どもに伝わると思います。まさに、熱血だと思いました。これから教師になろうとめざしているからこそ、誰よりも熱い気持ちを持っている、持っていたいと思います。週明けから実習が始まります。今日のお話を心にしまいながら臨みたいと思います。
  • 今日の講義を聴いて、私は、子どもの心に気づけるような教師になりたいと思いました。いじめや自殺は、誰が悪いと問いつめるだけでなく、子どもの心の傷に気づくことが本当に大切だと思いました。また、子どもの心に届くような教育をしたいと思いました。ただ叱るだけでなく、なぜそんなことをしたのか、一緒に考えることが大切だと感じました。野口先生のエピソードを聴いていて、涙が出そうなほど、感動しました。話を聴けて本当によかったです。
  • 教育は熱と涙、教育は愛情だ!!という言葉から始まった野口先生のお話。野口先生の情熱のこもったお話でした。私も過去にいじめられた経験があったため、共感する部分もあり、涙が出そうになりました。将来、絶対に小学校の先生になろうと強く、強く感じました。その時にもう一度野口先生からお話を聞かせていただきたいと強く思いました。この気持ちをけっして忘れないようにしたいです。お話を聞かせていただいて、ありがとうございました。これからのセミナーがより一層楽しみに思います。
  • 今日の先生の講演で一番心に残った言葉は、「子どもに好かれようとするな、子どもを好きになれ」です。今まで私はなるべく人に嫌われないように相手の顔色をうかがいながら話を進めるのが多かったのですが、もちろん教育の現場では、それは子どものためにならないと思います。それでも子どもに好かれる教師でいたいと思うと、理想の教師像というものがわからなくなります。今日の先生の講演で、子どもの良いところを見つけ、自分が子どものことを好きになれば、自然と子どももついてくるということを聞き、好かれる教師というものがどういう教師か、少し理解できたと思います。

 出張続きの野口先生が、旅の疲れを微塵も感じさせない熱のこもった講演をしてくださいました。今日の講演を糧にして、塾生・聴講生が教師のたまごとして成長する「ふくまる夢たまごセミナー」をめざします。野口先生、本当にありがとうございました。次回のセミナーは、「教育のまち池田」をテーマに6月21日(金曜日)午後6時より、市庁舎7階大会議室で行います。セミナーに関心のある方は、教育政策課にお問い合わせください。

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