ふくまる教志塾第2~4回夢たまごセミナー

更新日:2021年02月01日

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6月20日・7月18日・8月22日 ふくまる夢たまごセミナー?順調に推移

 平成26年度の第4期ふくまる教志塾がスタートして早3カ月。月1回のセミナーは、順調に推移しています。この間、月例のセミナーに加えて、現場実習ガイダンスや教員採用試験に向けての特別セミナーを実施してきました。第4.期のトピックは、九州からセミナーに参加する学生がいることです。
 ここで、この間の月例の「夢たまごセミナー」の概要をお知らせします。

6月20日 「池田の教育」

 第2回のセミナーは、開塾式の立命館中学校・高等学校の成山校長先生の講演を受けて、丹松美代志セミナーアドバイザーが講話をしました。
 最初に、「池田市制施行70周年記念式典」(2009年4月29日)の記録DVDを視聴しながら「池田市のあゆみ」について講話をしました。特に、国の重要文化財の久安寺、市内を代表する3つのミュージアム、とりわけ、逸翁美術館を取り上げ、池田市の特徴である市場町・城下町・在郷町としての発展に触れました。そして、全国統一をめざした織田信長が、直接出陣して池田城を攻め落としたことを話題にしました。その池田の町の経済基盤になったのが、酒造業です。現在も、「緑一」と「呉春」という2つの銘柄が生産されています。
 次に、ふくまる教志塾で学生のみなさんにつけてほしい力について、開塾式の話を受けて、「見えないものを見えるようにする(推し量る)=本質を見る」、「教師との出合いが子どもを変える」ということを押さえながら、「教師のあり方に関する領域、各教科に関する実践的指導力に関する領域、専門的知識に関する領域、学級経営・子ども理解・保護者に関する領域」について具体的に提示しました。そして、「学級担任の一日」を意識しながら、セミナーや現場実習ではどの部分の取り組みかを考えるように促しました。そして、何より大切なのは、大学での学びを大切にしながら、大学と学校現場の中間に位置するこのふくまる教志塾を活用することです。そのことによって、即戦力を備えた優秀な教師になることを期待していることを伝えました。

(写真)セミナー風景
(写真)セミナー風景

 後半は、「教育のまち池田」の特色と小中一貫教育に触れました。本年度から、本市で本格実施を始めた小中一貫教育については、鈴木主幹より説明しました。
 講話を受けて、学生のみなさんはグループ協議に入り、お互いの学びを交流しました。学生のみなさんの感想は、以下のようです。

塾生・聴講生の感想

  • 今日は池田の歴史についても詳しく学ぶことができました。改めて、池田市のことを誇りに思いました。これは、池田に住む子どもたちにもぜひ感じてほしいことです。その為にも、自分の地域のことを深く知り、話せるようになりたいと思います。
  • 私が今日のセミナーで学んだことが3つあります。1つめは、池田の歴史について知らなければいけないということです。自分のまちを知り、好きになり、それを子どもたちに伝えることが大事なのではないかと学びました。2つめは小中一貫校のことです。私はずっと言われている異年齢集団交流ができて良いと思いました。教師としても9年間という長い目で生徒と向き合うことは成長を近くで感じることができ、教師と生徒のつながりが太くなるのではと感じました。3つめは教師になって身につけないといけない力が教志塾に通うことによって意識できるということです。私はこの教志塾に行けてよかったなと改めて思いました。この力をつけていけるように現場実習・教育実習に臨みたいと思いました。
  • 小中一貫教育の重要性を知りました。私自身、中一ギャップを経験し、「授業の進め方」「学びの断絶性」を強く感じました。また相談できる先生も、当時、周囲になく、つらかったです。児童・生徒の不安やストレスの軽減・解消にもなると思います。「学び続ける教師の基礎」は大学での学びであることを再認識しました。大学で学問と向き合う態度もそうですが、そこで得た専門性は他ジャンルでも活かすことができると思います。現場実習や教育実習でそのことを確認したいです。
  • いま、日本の義務教育に求められていること、それをめざして池田市の教育が進むべき道を知る機会となりました。小中一貫教育によって広がる可能性を見出し、また、より議論を発展させるきっかけになったと思います。先生方のお話の後に行ったグループ討論は、そうした要素が多くあり、充実した時間でした。また、自分の考えを出して相手の考えを聞くこと自体が楽しかったです。また、冒頭にあった池田の紹介にもちゃんと意味や目的があるということを知り「なるほど」という思いがしました。見えないところがまたひとつ見えました。

7月18日?「授業の基礎・基本について」

 第3回のセミナーは、前回に引き続き、丹松セミナーアドバイザーが講話をしました。使用したテキストは、『子どもの居場所を確かなものにする学級経営 学級担任の一日/小学校』と『若い教師のための授業改善ヒント集』(いずれも東京教育研究所発行)です。テキストを使いながら、「授業は始めと終わりが肝心」、「授業の中での子どもの居場所」「環境が育てる」ことを考えました。その上で、ICTの活用性の必要性と現在の世界の教育が学習者中心に学びがシフトしていることを確認しました。そして、導入の工夫として、具体物の活用などを取り上げた後、授業づくりのモデルとして有田和正さんの「子どもを追究の鬼にする」実践を紹介しました。

(写真)授業の様子

 最後に、鈴木主幹が講話の感想と授業づくりの思いを伝え、グループ協議に移りました。参加者の感想を紹介します。

(写真)セミナーの様子
(写真)セミナーの様子
(写真)セミナーの様子
(写真)セミナーの様子

塾生・聴講生の感想

  • 居場所のある授業と教室、そして出番のある授業を展開できるようになりたい。教師自らが時にはズッコケて役者になり、児童の良いところを引き出してあげたいと思う。私は一人ひとりを大切にする気持ちが強いため、反応のおそい子どもにより時間をかけてしまうかもしれない。しかし、どんどん先を勉強するグループの子どもたちにも目をくばることを忘れず、常に全体を見わたす視点を大切にしたいと思う。複眼的に子どもたちを見つめることができるように実習校でもまなびたい。
  • 今日のセミナーのお話は教師になるうえで一番大切な授業の基礎・基本のお話でとても勉強になりました。その中でも一番印象に残ったのは、教室の誰に焦点を当てて授業をするかということです。私は一番下の子かなと思っていたのですが、それでは「博士クラス」の子どもたちにはつまらない授業になってしまいます。丹松先生が言っていたように授業の前半で、これだけは教えたいという基本を身につけてから、少し手を伸ばしたら届くかなと思う発展問題に進むという流れにすごく納得できました。前半の学習部分は跳び箱のロイター板で、それが有るのと無いのとでは跳び箱の高さが違って見えます。また、教師自身が「この子には難しいな」と決めつけるのではなく、子どもたちの可能性を私たちが信じて、「この問題にも挑戦してみよう」という気持ちで、授業を作り、子どもたちの前に立つ教師になりたいと感じました。
  • 今日、最後のグループの話し合いの中で、今回のセミナーは、一番濃かったねという話がでた。私も、今回のセミナーはいつもよりグループディスカッションの時間が多く、様々な意見を聞くことができて、多面的に考えることができた。私は、子どもの発言をつなぐのは「つぶやきを拾うことだ」という言葉を聞いて、教師は常にアンテナをいろいろな方向へ張っておかなければならないし、ベストタイミングで話をふり、授業を円滑に進めなれればならないので、授業力を身に付ける以外にも、学ぶべきところがたくさんあると分かった。
  • 「学級担任の一日/小学校」という冊子をもらい、本当に素晴らしい物をいただいたなあと思いました。私はまだ1回生で、大学に入って3カ月で、高校3年には曇っていた教師像、どうなりたいか、というのがしっかり見えてきています。まだ3カ月ですが、「ふくまる」により、よりはっきりした教師への思いが強くなりました。この1年間でもっと高めていきたいです。
  • 「はじまりとおわり」への教師の意識を、子どもたちにひろげていくことができるような先生になりたいと感じます。「学習意欲のない所に成果は期待できない」と鈴木先生はおっしゃっていましたが、現場の様子を見ていても、また自分自身を振り返ってもその通りだと思いました。「授業」の導入が、子どもたちの「学習」への動機付けになっているかということ、そして「まとめ」では次の時間が楽しみになるようなおわり方になっているのかということを、どの授業でも振り返りの材料にしたいと思います。また、今日の授業で一番印象に残っていたのは、必要がなければ話さないグループ学習についてです。

 学生のみなさんには、今日配布した冊子を、折々に開いて有効活用してほしいと伝えました。

8月22日?「安全教育について」

 第4回の、ふくまる夢たまごセミナーは、「安全教育について」緑丘小学校の矢野克己校長先生に講師をお願いしました。矢野校長先生は、13年前のあの悲惨な附属池田小事件のときの副校長です。3年前から、この教志塾で講話をお願いしていますが、自らの体験を語るまでに10年の歳月を要しました。自らを責め、教師をやめようかと迷われた時期もあったとお聞きしましたが、それらを乗り越えて、体験した者の責任として安全な学校づくりの語り部になる決意をされました。亡くなった天使たちや今なお後遺症に苦しむ犠牲者やそのご家族のことを念頭におきながら、この日の講話をしていただきました。学生のみならず、学校現場の多くの先生方に、直に矢野校長先生の話を聞いてほしいと思います。そのことを期待して、今回は矢野校長先生の当日のレジメを掲載します。

(写真)セミナーの様子
(写真)セミナーの様子
(写真)セミナーの様子
(写真)セミナーの様子
当日のレジメ

平成26年8月22日
池田市立緑丘小学校
校長 矢野克巳

ふくまる夢たまごセミナー次第

  1. 自己紹介
  2. 附属池田小学校事件の概要
    (1)事件前の附属池田小学校
    (2)事件の概要
    ・事件の経過
    □犯行経路 □犯行時間 □犯人の異常性と残忍性
    ・犠牲者について
    (3)事件の課題と反省
    ・教職員としてできたこと
    ・教職員としてできなかったこと
    (4)事件後の取り組み(学校再開まで)
    ・ご遺族、負傷児童への対応
    ・在校生への対応
    □PTSD(心的外傷性ストレス障害)への対応 □新しい制服着用
    ・教職員による事件検証
    □児童、保護者からの信頼回復
    ・学校再開に向けた取り組み
    □保護者説明会(5回) □安全管理マニュアル作成
    □家庭訪問 □大学への支援要請
    □非常勤講師の採用 □夏休みのフリースペース
    □文部科学省との交渉 □メンタルケア
    □初盆対応 □仮設校舎建設(設計、引越し)
    □警察、マスコミ対応 □支援ボランティア
    □教職員の心のケア
  3. 後世に伝えていかなければならないこと
    附属池田小事件を教訓として後世に伝えていかなければならないこと
    事件当時の教職員は、目の前に起こっていることに、その場の判断でそれぞれが必死に対応し、子どもたちの命を救おうと懸命に救命活動を行ったが・・・。混乱の中で学校全体としての状況把握ができず、組織だった救命活動を行うことができなかった。

<安全管理に万全はない>

  1. 重大な事件、事故がおきれば「学校危機」
    普段からの安全管理が大切(「まさか」からの脱却)
    ■まさか侵入者はいないだろう。 ■まさかプール事故は起きないだろう。
    ■まさか遊具は壊れないだろう ■まさか・・・・・
  2. 「学校は安全な場所である」という過信から、危機意識をもてなかった。
    「開かれた学校」とは「多くの人が集う学校」と考え、その中に犯罪者がいることは想定ができなかった。
  3. 京都日野小事件があったにもかかわらず、安全管理に生かせなかった。
    この事件について、当時の副校長から職朝で通知を聞いたが、自分たちの学校でも起こりうることだと想像できなかった。
  4. 管理職に危機管理意識が不足し(ケガ防止対応に関心を向けていた)、教職員にもいざという時の心の準備が備わっていなかった。
  5. 児童通用門、正門小扉、自動車通用門が常時開放されたままになっていた。
    安全よりも利便性を大切にしていた。
  6. 校舎前の樹木が、来校者の見えにくくしていた。(安全設備・環境への意識が低かった)
    来校者を職員室等から見渡せる工夫を設備点検でも入れる必要がある。
  7. 来校者確認は、事務所前に限られ、校舎内に自由に入れるようになっていた。
  8. 教職員の来校者に対する安全管理意識が甘かった。
    来校者への「声かけ」の大切さを意識していない教職員がいた。
  9. 事件後、学校電話(3台)がパンク状態。児童緊急連絡網(家庭電話)が機能せず。
  10. 緊急時の児童の帰宅方法を検討していなかった。

<危機対応能力が不十分であった・不審者対応緊急マニュアルがなかった。>

  1. 不審者対応や多数の負傷者を想定した緊急マニュアルがなかった。
  2. 目の前の対応に必死で、組織だった救命等を行うことができなかった。
    負傷児童の氏名、場所、人数、負傷の程度等の確認ができず、混乱の中で各教員まかせの救命活動になってしまった。
    火災報知機を火事以外で使用するという意識がなかった。
    火災報知機は全校に学校危機を知らせる有効な方法であることに後で気づいた。
  3. 救急搬送に教職員が同乗することができず、どこの病院に搬送されたのか掌握できなかった。・救急搬送担当者(複数)を決めておくことが必要
  4. 情報交換が十分でなかったため、全体的組織的な救急活動ができなかった。
    指令本部が必要。私自身が大学への連絡、保護者対応、警察対応、マスコミ対応等で動き回っていた。また、事件後、直ぐに事情聴取のため警察に連れて行かれてしまい、事件後の緊急対応を行うことができなかった。事情聴取は後日にしていただくようにお願いをすればよかった。(警察に反論する余裕すらなかった。)
  5. 事件後、即座に「緊急対策室」を立ち上げ、1.)記録担当2.)マスコミ担当3.)遺族対応4.)負傷者対応5.)保護者対応6.)児童対応等の担当を決め、組織だった対応を行うべきであった。特に、記録担当は事件後の検証を行う上で、たいへん重要である。
  6. 結果として、「110」より、まず「119」
    犯罪が起こってけが人等がでたとき、「110」は事情を聞かれるので時間がかかる。
    消防は、生命がかかっているためできるだけ早く駆けつけてくれる。
    注意事項あらゆる手段をつかって複数の通報(警察・消防)を行うことが大切である。

今こそ、こんなときだからこそ、学校安全についてみんなで考えよう

<教職員は、子ども一人ひとりの大切な「いのち」を守る仲間>

最後に、13年が経過し、本事件はだんだんと風化してきている。保護者や地域の皆さん教職員の危機意識はしだいに薄れ、「いじめ」「不登校」「自殺」「ハラスメント」等の問題にその関心は移ってきている。しかし、「子どもが安心して学ぶ学校」を創っていく上で、本事件の教訓を決して忘れてはならない。日本社会が疲弊し、人と人との関係性が希薄になる中で、第二の「宅間」が生まれないとも限らない。

危機管理意識の薄い学校の象徴

  • 上靴にサンダルが多い。(いざという時に走れない)
  • 名札を着けていない教職員が多い。
  • 毎年、侵入者対応プログラムにもとづいて、訓練や確認を行っていない学校
  • 附属池田小事件を他人事だと思っている教職員が多い学校
  • 保護者や地域の皆さんから危機意識が弱まってきている学校
  • 学校事故やプール事故を想定し、マニュアル化や訓練を行っていない学校
  • 学校事故の未然対策を怠っている学校等々

 

 貴重な講話をしていただいた矢野校長先生にこの場を借りてお礼申し上げます。

 ふくまる教志塾では、聴講生については途中参加も可能です。興味のある方は、教育政策課にお問い合わせください。

この記事に関するお問い合わせ先

池田市 教育委員会 教育部 教育政策課
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