第5回ふくまる夢たまごセミナー

更新日:2021年02月01日

ページID : 4248

概要

日時 8月25日(金曜日)18時~20時

 場所 池田市役所7階大会議室

 内容 講話「安全・安心な学校づくり」

~16年前のあの日 後世に伝えていかなければならないこと~

    講師:矢野克己先生(池田市立緑丘小学校校長)

講演の様子
講演を聞く塾生たち
事件の概要

 今回のセミナーのテーマは「安全教育」です。

 今年も矢野克己先生(緑丘小学校校長・元大阪教育大学附属池田小学校副校長)にお越しいただき、先生の体験談をもとに、学校の安全教育についてお話をしていただきました。

 大阪教育大学附属池田小学校で起こった児童殺傷事件も、今年で16年目を迎えました。当時、副校長としてお勤めになられていた矢野先生から、この「ふくまる夢たまごセミナー」で、当時の様子や事件後の思いを、お話していただくようになって、6年目になります。2度とこのような理不尽な事件を学校内で起こしてはならない、体験した者の責任として、これから教師をめざす若者に伝えなければならないという思いから、辛い記憶を乗り越え、お話していただくようになったとうかがっております。

 今年も、犠牲になった子どもたちやそのご遺族、今なお後遺症に苦しむ被害者やそのご家族のことを気遣い、時折、自責の念にかられるかのように、一言一言をかみ締めながらお話をしていただきました。

 今回は、30名の塾生と学校現場で活躍している中堅教諭1名が参加してくれました。今、池田市の学校で展開されている子どもを守る施策(スクールガードリーダーの配置、門扉のオートロック化や地域住民等による安全見守り隊 等々)の原点は、この附属池田小事件の教訓であったことを忘れてはなりません。16年前に起こったこの2度とあってはならない悲惨な事件を風化させてはならないという思いでいっぱいになりました。

 以下、矢野先生から配布のあったレジュメの一部を掲載します。

 

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附属池田小事件を教訓として

後世に伝えていかなければならないこと

 

 事件当時の教職員は、目の前に起こっていることに、各々がその場の判断でそれぞれが必死に子どもたちの命を救おうと懸命に救命活動を行ったが、結果は多くの痛ましい被害者を出してしまった。混乱の中で学校全体としての状況把握ができず、組織だった救命活動を行うことができなかった。

 

<安全管理に万全はない>

1. 重大な事件、事故がおきれば「学校危機」。普段からの安全管理が大切(「まさか」からの脱却)

 ・ まさか侵入者はいないだろう。  ・まさかプール事故は起きないだろう。

  ・まさか遊具は壊れないだろう   ・まさか・・・・・

2. 「学校は安全な場所である」という神話や過信から、危機意識をもてなかった。「開かれた学校」とは「多くの人が集う学校」と考え、その中に犯罪者がいることは想定ができなかった。(むしろ、外来者を歓迎していた。)

3. 京都日野小事件(運動場での児童殺傷事件)があったにもかかわらず、安全管理に生かせなかった。この事件について、当時の副校長から職朝で通知を聞いたが、自分たちの学校でも起こりうることだと想像力が働かなかった。

4. 管理職に危機管理意識が不足し(遊具や体育科指導等に行けるケガ防止対応には関心を向けていたが)、教職員にもいざという時の心の準備が備わっていなかった。

5. 児童通用門、正門小扉、自動車通用門が常時開放されたままになっていた。安全よりも利便性を大切にしていた。

6. 校舎前の樹木が、来校者の見えにくくしていた。(安全設備・環境への意識が低かった)来校者を職員室等から見渡せる工夫を設備点検でも入れる必要がある。

7. 来校者確認は、事務所前で行っていたが、悪意を持つ侵入者に対しては無防備であった。

8. 教職員の来校者に対する安全管理意識が低かった。来校者への「声かけ」の大切さを意識していない教職員がいた。「声かけ」の大切さを、教職員同士に共通確認できていなかった。

9. 事件後、学校電話(3台)がパンク状態。児童緊急連絡網(家庭電話)が機能せず。非常時の連絡体制が未整備であった。

10. 緊急時の児童の帰宅方法を検討していなかった。

 

<危機対応能力が不十分であった・不審者対応緊急マニュアルがなかった。>

1. 不審者対応や多数の負傷者を想定した緊急マニュアルがなかった。→訓練もせず。

2. 目の前の対応に必死で、組織だった救命等を行うことができなかった。負傷児童の氏名、場所、人数、負傷の程度等の確認ができず、混乱の中で各教員まかせの救命活動になってしまった。【管理職のリーダーシップが発揮できなかった】

3. 火災報知機を火事以外で使用するという意識がなかった。火災報知機は全校に学校危機を知らせる有効な方法であることに後で気づいた。

4. 救急搬送に教職員が同乗することができず、どこの病院に搬送されたのか掌握できなかった。→傷ついた児童に保護者が早期の面会ができなかった。

  ・救急搬送担当者(複数)を決めておくことが必要

5. 情報交換が十分でなかったため、全体的組織的な救急活動ができなかった。指令本部が必要。私自身が大学への連絡、保護者対応、警察対応、マスコミ対応等で動き回っていた。また、事件後、直ぐに事情聴取のため警察に連れて行かれてしまい、事件後の緊急対応を行うことができなかった。事情聴取は後日にしていただくようにお願いをすればよかった。(警察に反論する余裕すらなかった。)

6. 事件後、即座に「緊急対策室」を立ち上げ、1.)記録担当2.)マスコミ担当3.)遺族対応4.)負傷者対応5.)保護者対応6.)児童対応等の担当を決め、組織だった対応を行うべきであった。特に、記録担当は事件後の検証を行う上で、たいへん重要である。

7. 結果として、「110」より、人命救助は「119」を最優先

・犯罪が起こってけが人等がでたとき、「110」は事情を聞かれるので時間がかかる。

・消防は、生命がかかっているためできるだけ早く駆けつけてくれる。

 あらゆる手段をつかって複数の通報(警察・消防)を行うことが大切である。今こそ、こんなときだからこそ、学校安全について みんなで考えよう

 

      <教職員は、子ども一人ひとりの大切な「いのち」を守る仲間>

 

 最後に、事件後16年が経過し、本事件はだんだんと風化してきている。保護者や地域の皆さん教職員の危機意識はしだいに薄れ、「いじめ」「不登校」「自殺」「ハラスメント」「虐待」等の問題にその関心は移ってきている。当然、これらの問題は学校危機管理の上からも非常に重要な問題であるが、「子どもが安心して学ぶ学校」を創っていく上で、本事件の教訓も決して忘れてはならない。世界や日本の社会が疲弊し、人と人との関係性が希薄になる中で、第二の「宅間」が生まれないとも限らない。

・危機管理意識の低い学校の象徴

・上靴にサンダルが多い。(いざという時に走れない)

・名札を着けていない教職員が多い。

・毎年、侵入者対応プログラムにもとづいて、訓練や確認を行っていない学校

・附属池田小事件を他人事だと思っている教職員が多い学校

・保護者や地域の皆さんから危機意識が弱まってきている学校

・学校事故やプール事故を想定し、マニュアル化や訓練を行っていない学校

・学校事故の未然対策を怠っている学校       等々

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 塾生の中には、この事件についてほとんど知らないという者もおり、いつも以上に、切実感を持って聞き入っていました。

 講演後は、矢野校長先生のお話を受け、「学校の安全」についてグループワークを行い、班で話し合い、交流を深めました。

 最後に、セミナーアドバイザーから、語り継ぐことは、学校の重要な役割でもあること、「万が一」は起こり得るということを前提に「万が9,999」の日常を大事にしてほしい、さらに、危険を取り除くことだけが安全教育ではなく、危険にどう対処するかの能力を身につける教育でもある、等々の話があり、第5回ふくまる夢たまごセミナーが終了しました。

 改めて、ふくまる夢たまごセミナーでこの講座を設けることの意義を強く感じました。

塾生の様子
塾生の発言
発言
討議

<塾生の感想から>

・今日のセミナーを通して、事件の恐ろしさ、そして教師の責任というもの

を再確認しました。今日、矢野先生が話してくださったことをすべての学校

の先生が知っていたらこのような事件は起きないと思います。でも、これは、

今お話を聞いた自分だから思っていることであって、このことを10年後、

20年後も忘れないことが大切だと強く思いました。マニュアル作りや訓練をした上で、実際起きたときにどうするのか、日々考え続けることが大切だと考えました。そして、このことをいろいろな人に語り継いでいき、2度と同じことを繰り返してはいけないと強く感じました。

・子どもの命を一番に考えるというのはどの先生も同じだと思います。安全な学校であってほしいと願っていると思います。しかし、その非日常が起こった時にどう対応できるのかが、それぞれの差になってくると思いました。マニュアルがあることもとっても大切だと思います。しかし、そのマニュアルにないことが起こるかもしれません。そういうことも想像し、また自分の中でマニュアルをしっかりとかみくだいて理解できているかが大切だと思いました。また、今回の話を聞いた僕たちにも、このことを子どもたちや他の人たちにも語り継ぎ、伝えていく責任があるのかなと思いました。伝えていくにも、まず、自分の中で安全に対して、気を引き締めたり、考え続けていくことが大切だと思いました。

 

・附属事件は、私が小学校1年生のときに起こった事件でした。当時は、集団下校した記憶しかありませんでしたが、中、高、大と進学するにつれて事件の内容を知りました。ものすごい悲惨な事件で、何度話を聞いても胸が詰まる思いでいっぱいです。当時、母親が池田市民病院で働いていたので、学校側だけでなく、救急側の動きも知ることができました。開かれた学校には想像もつかない事件ということで、小さな子どもへの対応が難しかったと知りました。緊急事態がいつどこで起こるか分からない状況での臨機応変さも大切ですが、毎日の安全管理、小さいことを怠らない意識を頭の中に入れておく必要があると感じました。

 

・本日のセミナーにおいて考えたことは、“自分はどうしていくべきか”と

いうことです。『ひとつ』ではなく、『たくさん』の命を守るためには組織的

に動いていく必要があることが良くわかりました。その中で、「マニュアル」

は必要であるが、それは「まさか」の全てではないことをしっかりと頭に入

れ、それを基に自分だったらどうするかということを考えなければならない

と思いました。さらに、危機管理意識を持つことについて、本日の内容を後

世と言わず、周囲の人と積極的に話すことも大切なのではないか、さらに、

それらを通して安全とは何かということを振り返り、再確認する機会をつく

ることも重要ではないかと感じました。

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